公演振り返り
激動の日本を生き抜いた人々を描いた物語『花と龍』富山公演が、3月1日・2日とオーバード・ホール中ホールで上演されました。鮮やかな舞台転換、早替え、客席演技、迫力のアクションシーンなど、舞台から湯気のあがるような熱量の高い舞台にスタンディングオベーションで幕を閉じました。
舞台写真撮影:宮川舞子
『花と龍』面白かったですね。金五郎とマンをはじめ、明治時代後半の人々の生命力に圧倒されました。見所が多すぎて書ききれませんが、担当者はシーンによって頻繁に回転する舞台セットに感激しました。傾斜のある八百屋舞台(ステージ奥から手前にかけて傾斜がついた舞台のこと)がグルグル回り、俳優たちはその上で大立ち回りをするという離れ技!俳優たちもスゴイが、あのセットを考えた美術家も演出家もスゴイ!セットは電動で回転していると思ったお客様もいたようですが、実は演出部の人力(手作業)です。影の立役者、演出部の奥田さんに拍手です!見た目はゴツいが温和な奥田さんが「ストップウォッチで時間を測りながら回しました。」と教えてくれました。
この件は、ラジオ番組タニノクロウ「Kuro’s Bar」で、マン役の安藤玉恵さんが詳しくお話ししてくださいましたので、是非聞いてください。つくづく演劇ってチームで創りあげるものですね。
一人何役もこなす俳優陣にも感銘を受けました。例えば… 新ロイヤル大衆舎リーダーである、大堀こういちさんの役は、「語り・山下松次・大庭春吉・なんでも屋親爺・猫ほか」となっています。多すぎません?笑
主演・金五郎役の福田転球さん、マン役を演じた安藤玉恵さん以外は、全員複数の役柄を担っています。だから衣装の多いこと!中ホールに収まるのか?と疑うほどの物量でしたが、18名の俳優が様々な役柄を演じたからこそ、このスケールの大きな作品が実現したのですね。しかも驚いたことに…富山公演の初日、演出部スタッフもゴンゾ役で出演していることを知りました。
担当者:「あれ?なんで衣装着てるんですか?」
演出部スタッフ:「あ、私、ゴンゾ役で出演してるんです。」
衝撃を受けると同時に、笑ってしまいました。
客席での演技も多い本作のバックステージでは、俳優とスタッフが走り回っていました。
なんともパワフルな座組です!
今回、大きなチャレンジとなったのが、舞台上の屋台と飲食です。この試みはKAAT神奈川芸術劇場の芸術監督で、本作演出の長塚圭史さんからのご提案でしたが、「地域とつながる・人とつながる」ことをミッションとしているオーバード・ホールは心から賛同して実施しました。こちらの長塚さんインタビューに「実験的な試みをするワケ」が掲載されていますので、是非ご覧ください。
◆外部リンク
KAAT×新ロイヤル大衆舎vol.2『花と龍』の見どころは? 「やさしい鑑賞回」に取り組む意義は?~長塚圭史インタビュー
とはいえ、富山公演は当初、舞台上では販売だけで、飲食はロビーを想定していました。なぜなら舞台飲食を可能とするには多くの課題があるからです。KAAT公演が開幕し、担当者はすぐに視察に行って参りました。すると、劇場は驚くほどの高揚感!舞台上で初めて出会った方達とお酒を交わし、お喋りをして、最高に楽しい開演前の時間を過ごしました。そして「この高揚感を富山のお客様にも是非味わっていただきたい!」と思い至り、飲食可能に舵をきりました。
さて、富山の屋台運営に携わってくださった方達を紹介させてください。
オーバード・ホールでは2019年から『タニノクロウ×オール富山』という市民参加プロジェクトを実施しています。今回、【オール富山】仲間に声をかけたところ、素晴らしい活躍で屋台を盛り上げてくれました。それぞれ工夫を凝らした法被や衣装を身に纏い、呼び込みの掛け声も明るく賑やか!出店者の「ハーティーとやま」さんもオール富山メンバーで、なんと富山公演限定のグッズまで作ってくれました。
富山の県民性を考えた時、舞台に「活気」が先行して存在していると、お客様も世界観に没入しやすいのではないかと思い、オール富山に賑わい創出を依頼したのですが、これが大成功!だったと思います。アンケートには「屋台も楽しかった!富山の屋台はスゴイ!活気があった!」というコメントも見受けられました。富山公演を支えてくれたオール富山の皆さん、ありがとうございました!
また、オール富山だけでなく、オーバード・ホールと業務連携している富山ステーションシティ(マルート、マリエ、とやマルシェ)からは、焼き鯖寿司の「若廣」さん、「ちょっとBAR」さん、「アントステラ」さんが出店してくださいました。販売員さんたちは商品が足りなくなったと店まで補充に走り、釣銭がなくなったと走り、大忙し。千秋楽では屋台に関わった方も全員カーテンコールに登場したのですが、販売員の皆さんはわざわざ勤務シフトを調整して参加してくれました。様々な事業を面白がって関わってくれる富山ステーションシティさん、いつも本当にありがとうございます。
ところで、最近、オーバード・ホールでは『観たあとしゃべろう!』という企画を実施しています。これはその名の通り、終演後に観客同志が「あーでもない、こーでもない」と感想をお喋りする場です。取り組みを始めて日が浅くて試行錯誤中ですが、『花と龍』でも実施しました。今回は、初日に5名程度、千秋楽は20~30名程度の方が集まってくださいました。
この企画の目指すところは、ヨーロッパの劇場で見られる「終演後の賑わい」です。ヨーロッパでは終演後、ほぼ全観客がレストランに集い、観客同志で感想をお喋りして過ごします。もはや観劇よりもお喋りしたくて来ているのでは?と疑うほどです。
「いつかオーバード・ホールでも、そんな光景が見られるのでは。」と夢見て、ゆるゆる継続していきたいと思っています。今のところ、演劇やダンスの主催公演で実施していますので、よろしければ参加してみてください。
以上、長くなりましたが、たくさんの笑顔に会えた『花と龍』スタッフブログでした!
『花と龍』座組の皆様、KAATの皆様、素晴らしい作品をありがとうございました。
そして何よりご来場いただいたお客様、ありがとうございました。またのご来場をお待ちしております。