BALLET GALA

公演振り返り

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オーバード・ホール 大ホールは、国内有数のオペラハウスであるとともに、バレエを上演するにも鑑賞するうえでも最良な器と言える。

1996年の開館以来、これまでに当劇場で国内外の世界的バレエ団が上演してきた演目は、「白鳥の湖」、「ドン・キホーテ」、「くるみ割り人形」、「ジゼル」、「眠れる森の美女」、「シンデレラ」、「ロミオとジュリエット」等々…。いわゆる“幕モノ”の公演が多くを占めてきた。

 

そしてこの夏、中ホール最初の舞踊分野はバレエ・ガラ公演となった。

その名も、『INFINITY -PREMIUM BALLET GALA-』。

 

一般的にガラ(GALA)とは、「様々な小品を次々に上演する舞台や演奏会の形式…」というイメージがあるが、元々はスペイン語で「祝祭」などを意味する。

クラシック音楽界では、記念演奏会として“ガラコンサート”と名付けられる事も多々あり、思えば当劇場も数年前までは新年に「ニューイヤーGALAコンサート」を定例的に開催していた。

 

2年前の2021年7月、当劇場(大ホール)の開館25周年を記念し、ストリートダンス・バレエ・タップダンス・舞踏・フリースタイル等々、複数ジャンルの世界的ダンサー達が一堂に会した「INFINITY-DANCING TRANSFORMATION-」を上演し、コロナ渦での挑戦的な企画が大きな話題となった。いわばこの公演もガラ形式。そんなプロジェクトをプロデュースしたのは元バレエダンサーで、今は女優として映画・テレビドラマでも活躍する草刈民代さん。

 

中ホールの開館に向け、同じくINFINITYシリーズの第2弾として、舞踊の中でもバレエに特化した公演を、企画・キャスティング・構成・演出・振付補など、今回もフル稼働でプロジェクトを束ねていただいた。キャンスティングされた世界で活躍するバレエダンサー11名はいずれも今最も活きの良い顔触れ。これだけのトップダンサーを集め、そして全員を束ねていく草刈さんのパワフルなエネルギーと人望の厚さによって、各々が素晴らしいパフォーマンスを発揮し、とても充実した内容の公演となった。

ストーリー展開がある全幕モノとは違い、様々な作品のシーンを取り上げるガラ公演では特にストーリー性を重視しないことが一般的だが、今回草刈さんが掲げたのは「古典から現代までのバレエ変遷」。『白鳥の湖』や『ドン・キホーテ』などお馴染みの古典作品より抜粋したシーンから、本公演のために新制作された振付家・舞踊家:中村恩恵さんによるコンテンポラリー作品まで、まさにテーマに則した贅沢な小品ラインナップとなった。使用楽曲もヴィヴァルディのバロック音楽からコズマの20世紀シャンソンまで、バラエティーに富んだ内容が実に面白い。

なんと言っても世界的ハイレベルのバレエをこの至近距離で観ることは、オペラハウスやバレエ劇場では絶対に体感することのできない圧倒的な臨場感がある。ダンサーの表情・視線や汗を、呼吸を感じる。

世界で活躍する日本人ダンサーの皆さんを誇らしく感じるとともに、この中ホールの舞踊公演が、何色にも染まらない本ガラ公演でスタートできた事に感謝したい。

使い勝手の良さ、舞台・客席の距離感など、出演ダンサーからの評判も上々。勿論、舞踊公演ならではの見えてきた問題点やお客様からのご指摘など、まだまだ改善の余地はあるものの、中ホールの将来性や期待感、そして劇場としての可能性はまさに“無限大”そのものであると確信した。

 

まだまだ続くオープニング公演にも乞うご期待!

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