AUBADE HALL ARCHIVES 舞台の上の美術館Ⅱ

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  • 実施概要・アーティスト紹介
  • 対談 タニノクロウ×清河北斗
  • オンラインアンケート

映像配信

劇場でしか味わうことができないアート空間、映像でふたたび。

2017年3月、オーバード・ホール開館20周年を記念して実施した「舞台の上の美術館Ⅱ」。
劇場内に、富山県在住の造形作家・清河北斗と日本画家・平井千香子による作品を多数展示し、光と音による演出で壮大なアート空間をつくりあげました。
5日間の会期に約8,400名が来場し話題となった本展のメイキングから展示、ダンス、ライブまで、全ての記録映像を公開します。
コロナ禍の今、ふたたび劇場空間を思い出していただきたい。体感することは難しくても、劇場の空気や音、肌で感じた何かに思いをめぐらしていただきたい。
そんな願いをこめて配信いたします。ぜひご覧ください。

アーカイヴ配信 無料公開中!

メイキング

強いエネルギーを放出する造形作品の搬入から公開に至るまでのメイキングを公開!あの巨人はどのように出現したのか、必見の映像です。「巨人」は全長9メートル、「仮様」は全長12メートル高さ3メートル60センチにも及びます。メイキングでは、あわせて「仮様祭り」リハーサル風景もご覧いただけます。

常設展示

圧倒的な存在感でたたずむ造形、常に変化し続けた照明と音響にもご注目ください。劇場内の様々な場所に展示した作品もご覧いただけます。

「仮様祭り」舞台の上で祭りがはじまる

劇場とは本来、生身の人間による身体表現の場。「舞台の上の美術館Ⅱ」では、その舞台には人間ではなく造形が出現しました。ダンス作品「仮様祭り」では、それらの造形作品と人間の「生」のエネルギーが対峙しました。本展のために特別結成された総勢60名の仮様舞踊団による熱狂の踊りをご覧ください。千穐楽のカーテンコールの様子もご覧いただけます。

ライブTIME

清河北斗の巨大な造形作品に、平井千香子のドローイングを投影し、映像・照明・音響で魅せる「ライブTIME」を1日6回開催しました。常設展示とは世界観が一変する様子をご覧ください。想像力が無限に広がる、舞台ならではのライブです。

[ 観客あり ]

[ 観客なし ]

※本展は期間中、来場者による撮影および映像収録を許可して実施しました。

実施概要・アーティスト紹介

「舞台の上の美術館」とは

三面半舞台を保有する巨大空間と機構を備えたオーバード・ホールならではの企画「舞台の上の美術館」。
2017年に開催した「舞台の上の美術館Ⅱ」で軸となったのが、造形作家・清河北斗の彫刻です。本展では、清河が自らの作家人生でもかつてない大作に挑み、全長9メートルの巨人をオーバードに出現させました。
彫刻作品と競演したのは日本画家の平井千香子。色香と狂気を備えた独特の世界を持つ平井は、清河が発表した作品「仮様」に、直接筆を入れて新しい生命を吹き込みました。
そして決して美術館では実現できないこと。それこそが照明や映像、音響といった劇場ならではの機構を活かした大がかりな演出です。本展では、オーバード・ホールを知り尽くした舞台技術スタッフが舞台機構を駆使して、演出効果を高めました。

概要

オーバード・ホール開館20周年記念事業
舞台の上の美術館Ⅱ
KYOMU~巨無と虚無~

会期 2017年3月3日(金)~7日(火)11:00~20:00 <会期中無休>
会場 オーバード・ホール
料金 入場無料
企画制作 (公財)富山市民文化事業団

特集ページ 舞台の上の美術館Ⅱ

『舞台上の美術館Ⅱ』を見て

八木宏昌(富山県美術館学芸員)
会場に入った瞬間、薄暗い照明に浮かび上がる巨大な造形群が目に飛び込んできた。その圧倒的な存在感とインパクトのせいだろうか、SF映画の1シーンに入り込んだような感覚で吸い寄せられるようにステージへと誘われた。
舞台では、造形作家の清河北斗と日本画家の平井千香子によるコラボレーションが展開されていた。清河による巨大な立体造形「仮様(かりさま)」とそれを見下ろす9メートルもある2体の巨人。顔にはテレビのスノーノイズのような映像が投影され、思考の停止と心の空虚さを象徴しているようだ。
一方、平井は清河の「仮様」にペンとアクリル絵具で機械部品やパイプを描いた。その表現は、映画『エイリアン』で知られるH.R.ギーガーの作品を連想させたが、気の遠くなるような地道でストイックな作業から生み出された緻密な線は、メタリックなボディに不思議な陰影を付けていた。これまで「生きもの」にこだわってきた彼女の、機械的な表現と生物の融合を試みた新展開はとても新鮮だった。
また、動きのある表現も興味深かった。田畑真希の振付による「仮様祭り」には、生の力を強く感じた。土着でプリミティヴな武 徹太郎の音楽に触発され演者が踊り狂う。観衆も自然に溶け込み舞台が一体となる。まさに舞台空間のもつ力を見せ付けられた瞬間であった。
それとは対照的に、ライブTIMEは渡部良一の照明と曽根 朗の音響の演出による重厚なプログラム。ドローンなアコーディオンの音に合わせ、巨人たちに平井のドローイングが投影されると、メタリックな造形に平井の赤い線が引き立って会場に異様なエネルギーがみなぎっていた。祭りの狂騒と醒めた日常、ハレとケの空間を強く感じさせた毎熊文崇の見事な演出だった。
さて、「劇場の逆襲」と題されたこの企画の意図は、劇場でしか表現し得ない美術展の実現にあった。しかし、舞台での美術表現は一歩間違えば、舞台美術と捉えられてしまう危険を孕んでいる。今回それを分けたのは、明確な展示コンセプトだった。清河が語る「無自覚な進化」を空間全体で表現することにより、盲目的な文明の進歩に警笛を鳴らしているような雰囲気が生まれ、それが展示を展示足らしめていたように思われた。1つのテーマに向かって劇場全体が緊張感をもって技を結集する。まさに、昨今の美術館の劇場化に対する「逆襲」である。その点において、今回の試みは意義深いものであったといえるのではないだろうか。

アーティストプロフィール

造形作家
清河 北斗 Hokuto Kiyokawa

1974年生まれ、富山県黒部市在住。
1994年 東京芸術専門学校(TSA)卒。
2009年 「STUDIO/HOT」設立。
生命体的フォルムのシリーズ制作を経て近年は主に大型の作品を手掛けるなど機械と生身が融合した世界観や、生命進化の過去から未来へのプロセスをテーマに制作活動中。

日本画家
平井 千香子 Chikako Hirai

1972年生まれ、富山県上市町在住。東京モード学園在学中に、ファッションクリエーター新人賞国際コンクール日本代表、第10回ルミネファッション大賞を受賞。2005年より富山県上市町を拠点に絵画制作活動を開始。これまで第83回春陽展奨励賞、第1回越中アートフェスタ優秀賞・北日本新聞社賞、越中アートフェスタ2011優秀賞・北日本新聞社賞を受賞。2007年より文芸誌「弦」の装画を制作。数々の個展、グループ展に出展。

「仮様祭り」振付
田畑 真希 Maki Tabata

タバマ企画主宰。3歳からクラシックバレエを始める。更なる表現を追及するため桐朋学園短期大学演劇科に入学。様々なジャンルの身体表現を学ぶ。2007年より自身の作品を創り始める。滑稽なまでにガムシャラに、ユーモアを散りばめながら丁寧に時間を紡ぐ作風には定評があり、国内外で精力的に活動中。7カ国18都市にて作品を上演し好評を得る。
近年は様々な世代を対象としたワークショップを展開し、性別、年齢、経験などの差異を超えて、誰もが楽しみながら出来る身体表現の促進を目指す。

「仮様祭り」音楽
武 徹太郎 Tetsutaro Take

幼少期から音楽を、多摩美術大学では西洋絵画を学ぶ。平行して民俗音楽や民芸、土着の工芸品にのめり込む。絵画や音楽や芸能が分けられ専門化する前のルツボの様な状態に惹かれて、音楽の根を探るユニット「馬喰町バンド」を結成。リーダーとしてアジアの民族音楽のフィールドワークや、日本や世界の古謡・童歌を取り入れた独自の楽曲を発表。楽器製作ほかアニメーションや映画音楽の作曲、演劇舞台、ダンス伴奏など活動は多岐に渡る。イラストレーター、美術家としても活動する。

「仮様祭り」出演
仮様舞踊団 Karisama Dance Company

本展のために特別結成された舞踊団。小学生から60歳まで性別と年齢を超えた総勢60名で成り、普段は学生・会社員・主婦・劇団員など様々な顔をもつ。約20日間という短い稽古期間で集中的に創り上げた「仮様祭り」では、それぞれの煮えたぎる熱を爆発させる。

演出・技術監督
毎熊 文崇 Fumitaka Maikuma

1955年生まれ。玉川大学文学部芸術学科演劇専攻科卒業後、日生劇場の技術部に所属。 その間、西ドイツに研修留学も経験する。1995年より公益財団法人富山市民文化事業団所属。オーバード・ホールの開館に携わる。海外・国内からの招聘公演を多数手掛ける。主な演出に自主制作公演「億光年の響き」、「舞台の上の美術館Ⅰ」パフォーマンスタイム等。

照明
渡部 良一 Ryoichi Watabe

1976年より照明オペレーターとして活躍。また照明デザイナーとして「ナイロン100℃」など多数のプランを手掛ける。1995年より公益財団法人富山市民文化事業団所属。オーバード・ホールの開館に携わる。以来多くの自主制作公演の照明デザインを担当。主な照明デザイン作品に 「遥かなる山、そして彼方へ」(照明家協会優秀賞受賞)、「億光年の響き」、「そして誰もいなくなった」、「名作ミュージカルシリーズ」等。名作ミュージカルシリーズ第5弾「ショウ・ボート」では平成27年度 第35回 日本照明家協会賞 舞台部門大賞・文部科学大臣賞を受賞。

映像・音響
曽根 朗 Akira Sone

1990年にケーエヌビー興産(現KNB.E)に入社し、技術および制作として多くの番組制作に携わる。1995年より公益財団法人富山市民文化事業団所属。オーバード・ホールの開館に携わる。以来、多くの自主制作公演の音響デザインを担当。主な作品に「億光年の響き」、オペラ「アイーダ」、「木に花咲く」、「そして誰もいなくなった」、「オーケストラと遊ぼう」シリーズ、「名作ミュージカルシリーズ」等。

対談 タニノクロウ×清河北斗

特別対談
タニノクロウ(劇作家・演出家)×清河北斗(造形作家)

今回のアーカイブ配信にともない、急遽ふたりのアーティストによる対談を企画しました。

ひとりは、「舞台の上の美術館Ⅱ」で造形作品を発表した清河北斗。
そしてもうひとりは、2020年6月コロナ禍においてオーバード・ホールでわずか30名のお客様を迎えて「Meditaition」を発表した、劇作家で演出家のタニノクロウ。

「舞台の上の美術館Ⅱ」と「Meditation」。
いずれも劇場空間でなければ成立しない挑戦的な試みでした。
ジャンルは異なりますが、同じ空間に向き合ったアーティストの話をお聞きいただくことで、今回の配信をさらに楽しんでいただけるのではないかと考えました。

対談は「舞台の上の美術館Ⅱ」制作エピソード、お互いの仕事のこと、コロナ禍で考えたことなど話題は尽きず、ユニークで興味深いものでした。かねてから親交のあるふたりが、清河北斗のアトリエで普段どおり語り合った様子を、是非ご覧ください。

聞き手:福岡美奈子(オーバード・ホール)
「舞台の上の美術館Ⅱ」「タニノクロウ×オール富山」プロデューサー

Meditaition

2020年6月20日上演 タニノクロウ作・演出「Meditation」アーカイブ映像はこちらからご覧いただけます。

オンラインアンケート

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