公演振り返り
オーバード・ホールでは、こどもの皆さんに劇場で様々な価値観に触れてほしいという思いから、2024年より「オーバード・キッズシアター」と題した企画を行っています。
2026年は長野発のやさしいサーカス「ムーンナイトサーカス」をオーバード・キッズシアターとしてお届けしました!


「ムーンナイトサーカス」は、年齢や身体の状態、国籍や性別を越えて誰もが楽しめる現代サーカスです。
生演奏のなか、色とりどりの道具を使ったジャグリング、カッコイイ車いすダンスに、ドキドキするチャイニーズポールや神秘的なエアリアル…!と、わくわくする演目がセリフのほとんどないパフォーマンスで繰り広げられました!
いつもは「しー」と言われることが多い客席の中ですが、この日は声を出しても音を出しても大丈夫!
思わず立ち上がったり、ノリノリで一緒に踊ったり、思い思いに楽しんでいる様子が伝わる声や音が、パフォーマンスや生バンドの演奏と重なり合う光景に、嬉しい気持ちになりました。
「ムーンナイトサーカス」で特徴的だったことのひとつは、客席です。
一階前方の稼働客席を格納し、平土間(フラット)に。そして、クッションを並べました。
階段や段差はなるべく減らして。
イスに座るのが苦手でも大丈夫なように。
車いすやバギーで来てくださった方が、寝ころびながら観られるように。
そんな思いがありました。

大きな音や暗くなるのが苦手だったら、いつでも客席の外に出られるし、気持ちを落ち着かせられるように、カームダウンスペース(おちつくスペース)がありました。
マットのうえに座ったり、寝ころんだりしながら、おもちゃを握ったり、ときどきモニターを眺めたり……。

舞台ではいま、何が起こっている?
「ムーンナイトサーカス」のパフォーマンスは、セリフがほとんどありません。
でも、ときには言葉があるとわかりやすい場面もあります。
そんなときは…
手話通訳や、聴覚支援機器をとおして実況ナレーションを聞くことができました。
実際に利用された方から「難聴にも配慮があり嬉しかった。」「手話があり、ゆっくり喋っていたので、分かりやすかったです。」とのお声をいただきました。
また、次にどんなことが起きるのかわからないドキドキはつきものだと思うのですが、「ムーンナイトサーカス」では、こわいことがないように、安心できるように、サーカスで起きることの流れを書いた紙を配布しました。

ホワイエ(ロビー)にはジャグリングコーナーやフォトスポットが出現!
開演前も休憩中も、終演後も、サーカスに登場するパフォーマーたちと触れ合うことができました。
1日目の終演後はびっくりするような大雨でドキドキしていましたが、パフォーマーと一緒にジャグリングに挑戦したり、記念撮影をしたりしながらの雨宿りで、サーカスの後もホワイエは明るい空気で満たされていて、ほっとしました。

7月19日(日)の午前中には、中ホール内のウォーミングアップ室で、ちょこっとエアリアルが体験できるワークショップを行いました。

講師はムーンナイトサーカスでエアリアルのパフォーマンスをされているHiROKOさん!そして、サポートしてくださったのは、ジャグリングのZUTAさんとクラウンのトッチさんです。
1時間半という短い時間だったため、限られた人数でのワークショップでしたが、24名の方にご参加いただきました。
わっかに乗ってポーズをきめたり、ぶらんこで高速回転したり、逆さになったり…!
はじめてとは思えない身体づかいと思い切りのよさにびっくり!
そのほかにも、体験中のお母さんの様子をダイナミックに撮るお子さんや、お父さんに抱っこされながらブランコに乗ってみたものの、状況に驚いて泣きだしちゃう小さなお子さんなど、「たのしい」だけではないけれど、我慢することなくそのままで過ごせる時間は微笑ましかったです。
また、体験された方に「サーカスでほんものも見られる?」と声をかけてもらう場面もあり、本番の前にこのように交流できることも嬉しいなぁと思いました。
誰もが楽しめる「ムーンナイトサーカス」をオーバード・ホールで上演するにあたって、劇場の企画・制作を担当するわたしたちはどうしたらいいのか。
何ができて、何をする必要があって、何をしてはならないのか。
当日に関することはもちろん、いろんな方が情報を得やすいHPづくりや、チケットの販売の仕方まで、試行錯誤の連続です。そして、それは今も続いています。
「こうしたらよかったかもしれない。」
「もっと、ああしたらよかったかもしれない。」
正しいとか、間違っているとかじゃなくて、はっきり線引きできない「あわい」の部分を手探りすることが、「すべての人に届けたい」という気持ちにつながっていくのかもしれないと思います。
劇場に来ることを、舞台芸術の鑑賞を諦めなくていいように、そして、オーバード・ホールが安心できる場所であるように、これからも考えていきます。