リーディングドラマで広がる世界

公演振り返り

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去る9月5日、オーバード・ホール 中ホールにて、リーディングドラマ『終わった人』が上演されました。お足元が悪い中、たくさんのお客様にご来場いただき、誠にありがとうございました。
人気・実力ともトップクラスの中井貴一さん、キムラ緑子さんのお二人による朗読劇。ラインナップ発表の段階から反響が大きく、チケットは即完売となってしまい、欲しかったのに買えなかったというお客様もいらっしゃったと思います。申し訳ございません。ぜひ、またの機会にチャレンジしていただければと思います!

カーテンコールの様子

遡ること半年前。今年3月上旬に、オーバード・ホールの担当スタッフは、東京で行われた『終わった人』の合同取材会に参加させていただきました。出演者の中井貴一さん、キムラ緑子さん、原作者の内館牧子さんという豪華な面々が登壇され、内館さんが「終わった人」を執筆するに至った経緯や作品に込めた想い、中井さんが「妻役はぜひキムラさんに」とラブコールを送ったエピソード等々、とっても面白くて興味深いお話を聞かせていただきました。
取材会の様子は、情報紙MiteMite76号掲載の『終わった人』特集にまとめましたのでぜひお読みください!

Ⓒ山本倫子
Ⓒ山本倫子

何よりも、中井さんとキムラさんのオーラがすごく、圧倒されました!このお二人が新しく完成する中ホールの舞台に立って、この物語を演じられるんだなあと、その時からますます公演が楽しみになりました。

原作の「終わった人」は、結構分厚い小説なのですが、面白くてするするっとあっという間に読めてしまう作品です。主人公の壮介が「終わった人になってたまるか!」ともがいた結果、次々と起こる出来事(大体良くない結果に繋がるけれども…)から目が離せなくなります。ただ、壮介はいわゆる団塊の世代の仕事観をベースに書かれていると思われるので、今の現役世代の方には少し共感しづらいところもあるかもしれませんね(中井さんが取材会の時に「今のバージョンや女性バージョンの終わった人も読んでみたい」と仰っていたのが印象的でした)。でも、人が少しずつ年を取って、今までやっていたこと、できていたことができなくなっていく哀しさ、世代が変わっていくんだなという感覚は、時代が変わっても普遍的なもののように思います。そういう意味では、誰にでも胸に刺さる所はある作品だと思います。まだ読んでいない方はぜひ!

そして時は飛んで公演当日。長く晴天続きだった富山ですが、何故かこの日は土砂降り…。お二人が富山に到着された時には物凄い豪雨でなかなか駅から出られず、本番前に大変な思いをさせてしまいました…。でも開演までには無事雨は止み、時間通りに幕を開けることができました!

公演は、非常にシンプルな舞台セットで二人だけしかいないのに、お二人の声の力と圧倒的な存在感によりたくさんの登場人物が舞台上に現れて、本当にその場で起こっているかのような情景が見えてきて、朗読劇のイメージをいい意味で壊されました。
主人公の壮介は自信家で自分勝手、奥さんにあんな態度取られても自業自得!と思うけれども、中井さんが演じるとどこか憎めない魅力が溢れていました。キムラさんが演じるのは壮介の妻・千草から、娘の道子、バーのマダム美砂子、壮介の運命を変える若き起業家の鈴木(これは男性役!)など老若男女さまざまで、特に印象的だったのは愛人候補の久里役です。壮介を悪気無く?引っかき回す、ある意味魔性の女ですが、キムラさんの手にかかれば本当にそんな女性がリアル存在しているかのように思えました。
身につまされるような悲哀もありながら、笑いの絶えない舞台で(これでも富山のお客さんは静かな方みたいです)、でも最後にはじーんと心温まる、あっという間の2時間でした。

Ⓒ山本倫子

最後に、舞台以外のエピソードを一つご紹介します。以前より中井さんと親交のある富山出身の落語家・立川志の輔さんが、本公演のために素敵なスタンド花とたくさんのます寿司を差し入れてくださいました!故郷富山をこよなく愛する志の輔さんの温かさに触れ、中井さんはじめキャスト・スタッフの皆さんは大感激。
さらに、キムラさんのお知り合いの方からも別のお店のます寿司が届き、開演前の楽屋はます寿司祭りに!終演後のトークでもキムラさんは「ます寿司美味しかった~」と仰っていて、皆さん富山の美味に喜んでいらっしゃいました。

オーバード・ホールでは、秋から冬にかけてもバラエティ豊かな主催公演が目白押しです。ぜひご期待ください!

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