【観劇レポート】『飛び立つ前に』東京公演を観てきました。

観劇レポート

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11月26日、東京芸術劇場で『飛び立つ前に』を観劇しました。

2024年5月にオーバード・ホール 中ホールで上演した『息子』『母』公演と同じく、作:フロリアン・ゼレール、演出:ラディスラス・ショラーの鬼才コンビよる日本初演『飛び立つ前に』。
『息子』『母』ですっかり二人の世界観に魅了されていた私にとって、待望の新制作公演でした。

舞台が始まると、そこには父・アンドレ役の橋爪功さんが。人生のすべてを込めて立っていらっしゃるような、その佇まいに強く胸を打たれ、圧倒されます。
著名な作家アンドレとその妻マドレーヌ(若村麻由美さん)の家に訪問する、二人の娘アンヌ(奥貫薫さん)とエリーゼ(前田敦子さん)。男(岡本圭人さん)や女(剣幸さん)の登場で混迷する日常。

父・アンドレ(橋爪功さん) 妻・マドレーヌ(若村麻由美さん)
撮影:細野晋司
撮影:細野晋司
撮影:細野晋司

人生の終幕を演じる橋爪さんの戸惑い、憤り、悲哀も、若村さん演じる妻の朗らかさと凛とした姿も圧巻です。揺らぎながらも自分自身や家族に向き合っている奥貫さん、前田さんの長女、次女が愛おしい。『息子』『母』とは異なる魅力が光っていたのは岡本さん。そして、異質な存在感で舞台をぐっと面白くしていたのが、富山が誇る剣さんでした。
現実なのか幻想なのか、過去のこと今のことが入り乱れ、観客は皆、その混乱に身を任せながら出演者6人の迫真の演技に引き込まれ、家族の物語を見届けていました。
私は少し後悔していました。台本を読ませてもらってから観劇したことを。この翻弄される演劇体験を、私のものとして真正面に受け止めたかった。そんな作品でした。

物語が繰り広げられたのは、ダイニング兼リビングのような一部屋。マドレーヌがキッチンの窓から庭を眺め、アンドレが新聞を読み、娘たちの笑い声が響いていたであろう、家族の時間が刻まれた空間。そんな場所に浮かび上がってくる小さなほころびは、どこの家族にも起こりうるかもしれないことが、真に迫ります。

撮影:細野晋司

人生は儚い、だからこそ愛しい。痛みに揺らぎながら、みんな生きていく。
きっと誰もが、娘の肩を抱く父の姿に、夫婦の愛の深さに、誰かを思いながら涙するはず。
終演後、エリーゼのような末娘である私が抱いていたものは、私に老いる姿を見せ、旅立ってくれた父への思慕と感謝の念でした。

チケット残り僅かです。
富山公演が、地方公演の最後を飾る大千穐楽であることを光栄に思い、オーバード・ホール 中ホールで皆さまのご来場をお待ちしています。

関連公演

主催公演 中ホール

日時 2026年1月31日(土)〜2026年2月01日(日)
1月31日(土)14:00開演 2月1日(日)14:00開演 上演:約1時間50分(休憩なし)

『飛び立つ前に』

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