制作日記
オーバード・ホール 大ホールは、『踊れ!第九』公演をもって約2年間の改修工事に入ります。
上演を明日に控えた今、最後の仕上げに向けて総稽古を行っていますが、開幕にあたり、想いを書かせていただきます。
この劇場では、28年間にわたり音楽・演劇・舞踊・ミュージカルなど数えきれないほどの作品が上演されてきました。その歴史をいったん締めくくるにあたり、「今のオーバード・ホールらしいフィナーレは何か」を考えました。

オーバード・ホールとその前身の富山市公会堂では戦後から60年以上、市民による『第九』演奏が続いてきました。年末になると公募で結成された合唱団が舞台に立ち、歓喜の歌がホールに響く。それは単なる音楽イベントではなく、街の文化であり、風景でした。ですが、大ホールの休館で富山市での『第九』はいったんお休みとなります。
60回にわたり長く継続するには、様々なご苦労があったと思います。我々はこれまでの長い継続への敬意と感謝を込めて、フィナーレを『第九』で締めくくることにしました。
そして、私たちらしい『第九』とは何かを考え、ベートーヴェンの楽曲を踊り続けている森下真樹さんに依頼して【踊る第九】に挑戦することになりました。

音楽と身体が出会い、ベートーヴェンの「歓喜の歌」を新しい形で上演する。
これまでは「反響板」が設置され、クラシックの演奏会に相応しい環境で演奏されてきましたが、今回は反響板を取っ払い、音や照明といった舞台ならではの機構をフルに活かすことにしました。
この基本構成の決断は悩ましいものでした。しかし従来のスタンダードや既存の概念をこえて、人間の創造力が新しい未来を拓いていく、そんな挑戦こそがオーバードらしいと考えました。
今回の舞台で踊られるのは、コンテンポラリーダンスです。
このダンスには型も正解もなく、ひとり一人の人生が身体の動きとなって現れます。



森下さん、ルードヴィヒ5のプロフェッショナルなダンサーに加え、10代から70代まで24名の市民ダンサーが参加し、それぞれの歩んできた時間を全身で表現しています。「その人にしか表せない踊りがある」―稽古を見ていて、まさに実感しています。
第4楽章では、選ばれた28名の声楽家が登場します。圧倒的な歌唱で合唱と独唱をリレー形式でつなぎながら、振付にも挑戦しています。歌うだけでなく、声と身体で踊り、表現する声楽家の姿は、これまでにない『第九』の風景を生み出しています。
また、特別編成された約80名のオーケストラには、富山ゆかりのプロ奏者に加え、地元高校生など若い演奏家たちも参加しています。難曲『第九』に挑み、音楽監督・辻博之さんの指導のもと、夏から稽古を重ねてきました。その上達ぶりは驚くべきものがあります。
世代を超えて紡がれる音と身体には、未来を感じる力強さがあります。
プロも市民も、若者もベテランも、一つの目的に向かって稽古を重ねる日々。
それぞれの“生きてきた時間”が、ひとつの舞台の中で出会う。
その光景こそ、劇場が生み出す奇跡なのだと感じています。

劇場は、作品を上演し、鑑賞するためだけの場所ではありません。
誰かの表現に心を動かされ、自分の街に誇りを感じたり、舞台に立つことで人生が少し前向きになったり。
オーバード・ホールは、多様な価値観に出会い、変化が生まれる場所でありたい、街や人と密接につながる場所でありたい。『踊れ!第九』には、その原点と未来が詰まっています。
演出・振付の森下真樹さん、音楽監督・指揮の辻博之さんはじめ、振付助手の中村駿さん、ルードヴィヒ5の皆様、ステージコーディネーターの伊豆牧子さん、照明の三浦あさ子さん、出演者の皆様…かかわってくださった全ての方々の自由な発想とご尽力で驚くような作品が出来上がりました。かかわった全ての方の自由な発想で驚くような作品が出来上がりました。
ひとりでも多くの方に、この作品を見届けていただきたいと願っております。
明日がいよいよ初日です。ご来場をお待ちしております。
📅 公演日:2025年11月15日(土)・16日(日)
📍 会場:オーバード・ホール 大ホール
🔗 詳細:https://www.aubade.or.jp/static/special/dancing-beethoven9/