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2020.07.01(水) 

タニノクロウ×オール富山 2nd Stage 関連企画「Meditation-The day before daylight-」の劇評をご紹介します~オンラインアンケートに寄せられた声とともに。

6月20日に上演した「タニノクロウ×オール富山 2nd Stage」関連企画 「Meditation -The day before daylight-」
ステージナタリー編集長・熊井玲氏による劇評をご紹介します。

アーカイブ映像は、こちらでご覧いただけます。

劇評

熊井 玲 (ステージナタリー編集長)

「自分は今、何を見ているのか」を思考する時間

劇場に足を踏み入れたときのあの感覚を、何に喩えたらいいだろう。頭ではなく肌で空間の大きさを感じ、これから始まる“何か”に仄かな期待と緊張を感じるあの感覚を、そういえばしばらく忘れていた。

でもその感覚は、場内に案内されるもっと前、オーバード・ホールに着いてすぐに検温と消毒を求められ、銀色のミラーシールドがついた真っ白なヘルメットを、同じものを被ったスタッフにうやうやしく手渡された瞬間から、既に始まっていた気がする。かつて渋谷のとあるマンションの一室にあったペニノのアトリエ・はこぶねも、観客はこっそりとマンションの近くの路上に集合して、何回かに分けて速やかに部屋へ通された。その“秘密結社”のようなスリルが、作品の大きなエッセンスになっていたと思うが、「Meditation」もそんな入場前の一連の儀式が、劇場と作品への思いを一層募らせていたのかもしれない。

タニノクロウの指示で、観客は客席の、劇場スタッフは舞台上の、スポットライトが当たったポイントにそれぞれ着いた。全員ヘルメットを装着しているので人の見分けはつかないが、舞台上のスタッフは服装から、劇場案内係や警備員など、どんな役割の人たちなのかが想像できた。その様子はそれだけで壮観だったが、舞台ではそれ以上のアクションは起きず、場内に響くゴゴゴーっというノイズ音とライトを浴びながらじっと舞台を見つめていると、いつの間にか思考は眼前の光景から離れ、遠くへと飛び立ち始めた。

「自分は今何を観ているのだろう?」「舞台を」「舞台の何を?」「ただ、人を」「舞台に人がいれば演劇か」「そもそも演劇とは何か?」

すると、そんな自問自答を分断するように、突然一切の音と光が消え、闇が訪れた。数分に及ぶ闇の中で何も見えない舞台を見つめながら、頭はさらに情報を求めて目まぐるしく回転する。「この暗闇に、自分は今何を観ているのか」「自分は今、どこにいるのか」……。

そこへ「美しき青きドナウ」の晴れやかな旋律が聴こえてきた。さらに一筋の光が舞台を照らし、舞台からむくむくと何かが膨らみ始める。曲の高まりに合わせてぐんぐんと姿を現した“それ”は、照明の加減でさまざまに表情を変えながら、ついに青白く光る地球となった。舞台の真ん中にぽっかりと姿を現した地球を、観客も舞台上のスタッフもじっと見つめる。

──「Meditation」で起きたことは、ただそれだけ。しかし私が地球を見ながら自分の“現在地”を確認したように、劇場にいる人それぞれが、それぞれの思いをもって地球を眺めていたであろうことは、終演後、なかなか劇場から人が立ち去らなかったことからも明らかだった。

本作のベースとなった「MOON」(2017年初演)は、俳優たちが観客を先導し、観客を巻き込むことによって共に宇宙空間を立ち上げようという作品だった。対して今回の「Meditation」は、照明や音響など劇場本来の“力”を使いつつ、観客とスタッフがそれぞれの脳内で共に宇宙を育んでいく作品で、その意味では劇場でしかできない、最も王道かつストレートな演劇作品だったと言える。また近年のタニノは、寺院を模した空間に観客を招き入れ儀式的なパフォーマンスを繰り広げる「蛸入道 忘却ノ儀」など、観客がフラットに作品に参加できるクリエーションを目指しており、「Meditation」はまさに、参加者それぞれが自身の想像力で作品に関わっていく、究極の“観客参加型”作品だったと言える。

新型コロナウイルス感染拡大による約3か月の活動自粛から、「Meditation」で “夜明け”を迎えたタニノとオーバード・ホール。本作には、ポストコロナ社会におけるクリエーションに向けた、タニノとオーバード・ホールの強い意志と決意が刻み込まれている。

PHOTO

撮影:柳原写真事務所

オンラインアンケートより(抜粋)

今回、初の試みとしてオンラインによるアンケートを実施しました。
オーバード・ホールにお越しになった方、配信をご覧になった方、県内外・国外からも数多くのアンケートを頂戴しました。貴重なご意見の全てを、タニノクロウ氏とオーバード・ホールで共有させていただきました。誠にありがとうございます。いくつかを抜粋してご紹介します。

◆富山市内 男性 (劇場鑑賞) 現代の世界的な社会状況、特にウィルスに覆われた世界では、あらゆる分野の人たちが、出来ることに制限され、言いようのないストレスを感じている。ヘルメットによって視覚と聴覚を奪われたまま劇場で想うこと、そして考えること。何も演じられない、何も言わない、そんな事が新鮮にも思えた。過去に1時間の間、何も演じられない映画?舞台?はあったが、この度のタニノクロウ作品は、ウィルスに覆われる時代の始まりを意味するに一隻を投じる見事な作品だと思った。この舞台を成功させたスタッフの方々、関係者の方々に心からお礼申し上げます。

◆富山市内 女性 (ライブ配信鑑賞) 体感型の企画のようなので、ライブ配信の視聴では演出意図を感じ取るのが難しかったですね。やはり実際に会場で体感したかったです。

◆富山県内 男性 (ライブ配信鑑賞) オーバードがこういった舞台表現を行っていくことをポジティブに表明する取り組みを率先してすすめていただけることは、演劇に限らず非常に頼もしいことだと感じています。音響面ではいくつか気になったことがありました。ヘッドフォン視聴推奨なのであれば、配信の音声は(可能かどうかわかりませんが)劇場内の音響だけでなく(もしくはミックスして)音響の原音を流した方が向いているように感じました。劇場内の音声だと、ヘッドフォンでもいまひとつ「遠い」ように聞こえた印象です。
瞑想が開けてからのパートですが、前半と音色や音楽的な雰囲気が大きく異なるためか、仕方ないのでしょうが記録用カメラのシャッター音が非常に耳につきました。以上です。これからも面白い企画を楽しみにしています。

◆金沢市 男性 (劇場鑑賞) 劇場を感じる公演だなと思いました。最近はあまり観に行けてませんが、これまで鑑賞した演劇を振り返っていました。タニノクロウさんの次の公演がとても楽しみです。

◆埼玉県 女性 (ライブ配信鑑賞) 「とても満足」でないのは、仕方のないことですが、臨場感が全然違うと思えたからです。今回は無理でしたが、ぜひ劇場で観たかったです。

◆大阪府 男性 (ライブ配信鑑賞) 意識が、想像力が広がる感覚。

◆富山県内 女性 (劇場鑑賞) とても良い時間を過ごさせていただきました。劇場空間はやっぱり特別だなぁと再確認しました。
ヘルメットをかぶって劇場で集団瞑想をして、個人的な眠りにつきそうになった直後に、宇宙から皆で地球を見るような気分にもなれるなんて、劇場の可能性は無限大だなと思いました。こういう体験ができると、富山県に住んでてよかった!と心底思います。

◆東京都 男性 (ライブ配信鑑賞) 無料ライブ動画配信を試験的にオーバード・ホールが行うと聞き、劇場の在り方の今後に向けた試みとして、東京の自宅のiPadで非常に興味深く拝見しました。暗くしてヘッドホン使用は確かにこの演目では効果的でした。美しい映像でした。生であること、「ああ、今オーバードでやってるんだ」という生放送感を感じながら観ることができました。
しかしながら、映像は「視覚」と「聴覚」への情報を切り取ったものにすぎず、ライブをただ生配信するだけではやはり物足らなく感じざるを得ませんでした。動画で見応えを出すにはどうしても「編集」技術が必要で、空気感、臨場感、緊張感、一体感、といったようなものを、映像と音を使ってどうそれらしくみせるか、動画配信するのであれば、どう考えても生とは「別物」なのですから、何かしらの手は加えないと映像で作者の意図は視聴者に充分に伝わりにくいのではないかと思います。
今回のオーバード・ホールの前向きな実験に、心からの拍手を送りたいと思います。この先ライブ動画配信は必ず求められていくだろう分野かと思いますので、オーバード・ホールには、パイオニアであっていただきたいと、今後もエールを送りつづけたいと思います。

◆富山県内 男性 (劇場鑑賞) 他者との距離が適度に離れていたので孤立できた。
まず聴覚が研ぎ澄まされノイズの中に音を聞き、次に肌感覚が敏感になり空気の流れを感じ、 闇の中、オーバードの天井に星を見た。
このまま続ければ嗅覚・味覚が鋭敏になり、すべての感覚が統合され超人と化すのでは?…などと考えていたら。 まさかの「美しき青きドナウ」で現実となってしまった(笑) 興味深い体験でした。 やはり、リアル舞台っていいですね。 タニノクロウさんはじめ、関係各位に感謝申し上げます。

◆海外在住 女性 (アーカイブ配信鑑賞) 素晴らしい機会をありがとうございます。危機的状況の中でも創造性を享受できることを大変うれしく思います。

◆富山市内 男性 (ライブ配信鑑賞) コロナウイルスの影響で芸術・演劇界に深刻なダメージがあっただけではなく、社会全体としても精神が摩耗し荒んだ中で、この公演はそれでも前向きに生きていこうというメッセージを優しく伝えてくれました。
10分間の瞑想が、昨今のバタバタな日常を心の中で整理できる時間として働き、その後の地球のバルーンが持つ(受け手として感じる)意味をより深く受け止められました。
コロナ禍に負けずに生きていくことを、言語化された言葉ではなく、けれども雄弁に伝えていて心のゆとりを頂けました。
この時世の中、本公演を行い配信をしてくださったキャスト、スタッフの皆様、演出家のタニノクロウ様、そしてオーバード・ホールの皆様に深く感謝します。これから演劇が日常に戻ってくることを祈ってます。

◆富山県内 女性 (劇場鑑賞) 劇場空間と時間を自分のために使わせてもらったような感覚でした。劇場の役割のシンプルな可能性、空間と時間の共有の場。照明が音響がさまざまな仕掛けが無の境地を演出することで、個々の中にドラマが流れる。地球は青かったね。

◆東京都 男性 (ライブ配信) オンラインでも参加感あって、劇場を感じることができました。よかったです

◆米国 男性 (アーカイブ配信鑑賞) 意欲的な公演で素晴らしい。

◆高岡市 女性 (劇場鑑賞) 素敵な時間と空間でした。この時期に、先手をきって公演を立ち上げてくれたのが、オーバード・ホールという大きな劇場。とても勇気が出ました。これからも、楽しみにしております。

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