富山だけの特別なステージ
オーバード・ホールで今年の秋に幕を開ける世界初演オペラ「ストゥーパ~新卒塔婆小町~」。
演出台本はもとより照明や衣装、小道具等々にまでマエストロ西本智実が総合プロデュースするこの舞台は、「能」で表現されている“幽玄”の世界をオーケストラと合唱が奏で、俳優陣がドラマを演じる総合芸術である。
この革新的な舞台はまさに「イノベーションオペラ」。
洋楽器を用いて和楽器の音を表現するなど、“和”と“洋”の文化が融合された挑戦的なオペラといえる。
そんな特別なステージが富山だけで実現する。
アジア発の作品を生み出したい。
2012年、自身が芸術監督としてオーケストラ・オペラ・バレエ・合唱から成る「イルミナート」をプロデュースし、日本の伝統芸能を取り入れたオペラの演出を手がけたりなど、革新的な挑戦を続けるマエストロ西本智実。
近年は日本と欧州、古典と現代という文化融合を次々と実現させてきた(京都南座オペラ「蝶々夫人」、「泉涌寺音舞台」等)。
また、2013年「ヴァチカン国際音楽祭」にアジア初の団体として招聘され、大きな喝采を浴びた『西本智実とイルミナートフィルハーモニーオーケストラ&イルミナート合唱団』。今年も5年連続で招聘されることが決定し、今ではウィーンフィルと並んで、音楽祭のホスト・オーケストラとして2本の柱として位置付けられている。
クラシックの世界では常にヨーロッパがお手本で、私たちアジア人はどれだけ彼らに近づけるかという基準で評価されることに疑問を感じていたという西本智実。
アジア発の作品を生み出し、世界中の人達に興味を持ってもらい共有できる価値観を生みだすこと。
そして世界に向けてもっと発信したい。
そんな思いを形にした舞台がついにオーバード・ホールで実現する。
洋楽器で和楽器の音を。
「この舞台では、全て洋楽器でまるで和楽器にしか聴こえない音も出したいと考え作りました。西洋楽器で特殊奏法も用い能管や尺八、鼓のような音を」
「和楽器奏者が海外で演奏する事はありますが、ピアノやヴァイオリンのように根付く事は難しかった・・」
和の観念の魅力を洋楽器を通じて奏でてみる方法で世界中に発信したい。西本はその想いを込め公演に制作に挑む。
卒塔婆の語源が、サンスクリット語でStupa(ストゥーパ)であった事を知った時、私の中で点と点が繋がった。
今回、世界初演となるこの作品は、能楽作品の【卒塔婆小町】とも三島由紀夫氏の【卒塔婆小町】とも異なる、新作の舞台。
台本は、小野小町の残した歌を軸に「輪廻転生・無為の罪」をテーマに西本智実が書き下ろした。
数年前、卒塔婆の語源が、サンスクリット語でStupa(ストゥーパ)であった事を知った時、彼女の中で点と点が繋がり始めた。ストゥーパ→ソトバ→漢字を当てて卒塔婆。
観阿弥が生み世阿弥が磨いたお能【卒塔婆小町】という日本の古典をイノベーションオペラとして小野小町の孤独を甦らせたいと願い、舞台を製作したい情熱に駆られて模索準備していたマエストロの思いが富山で花を咲かせる。