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400年の時を超えて、妖精の森をあなたに 『夏の夜の夢』シーシアス/オーベロン役 村井国夫さんにインタビュー(聞き手=翻訳家・松岡和子)

村井国夫

村井国夫
俳優。ストレートプレイの古典から現代劇、またミュージカル界でなくてはならない存在。07年菊田一夫演劇賞受賞。

松岡和子

松岡和子
翻訳家・評論家。本作品を翻訳。1996年から取り組むシェイクスピアの全作品翻訳は、数々の舞台で上演されている。



演出のジョン・ケアード氏は、本場英国RSC(ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー)の名誉アソシエート・ディレクター。『夏の夜の夢』について「シェイクスピアの生み出した喜劇の、最高傑作のひとつ」「これは愛することと失うこと、狂気と健全、夢と現実、信頼と不安を描いた芝居、言語や文化の境界線を越えて人間の心が持つ複雑な機微を賛美する作品である」と語ります。そのケアードとともに、400年以上の時を越えてシェイクスピアの世界を私たちに届ける俳優・村井国夫さんにお話をうかがいました。聞き手は、本作品も含め、シェイクスピアの全作品翻訳に取り組む松岡和子さんです。


About ジョン・ケアード
ジョンの演出には愛情がある だから、役の一つひとつが生きている

松岡

この公演のために、私が初めてジョンと会ったのは、ちょうどパック役にチョウソンハさんが決まった時で、彼は「やっと見つかった」って、とても興奮していました。

村井

ジョンのキャスティングは素晴らしいんです。もちろんパックはとても重要な役ですけど、でも実は、どんな役もすべて重要な意味を持っている。僕はずっと『レ・ミゼラブル』のジャベール役をやってきましたが、彼は通行人の一人ひとりにも、その俳優と一緒に人生の物語を作り出す。表現とは「芝居をすること」じゃなくて、いかにそこで存在できるかなんだと、何度も感じさせられています。

松岡

今回も、グループで出てくる妖精や職人たち全員の性格や特徴、生活感がきっちり描かれていて、それがとても素敵です。

村井

ジョンにとって、キャスティングはオーケストラなんです。1回しか音を出さない楽器があっても、その1回に大きな意味があると考えている。だから『夏の夜の夢』でも、あらゆる役が、俳優が確かな存在として立ち現れてくる。根本には俳優に対する理解や愛情があるんですよ。

松岡

スタッフ全員に対してもそうですね。私も、自分がこの演劇の、とても大事な一員だって感じさせられました。

村井

このカンパニーを一つにしちゃうんですね。彼は何よりもまず、全員の名前を覚えちゃうでしょ。俳優が有名か無名かなんて一切関係ない。だから、みんなが自由に伸び伸びと表現できるし、もう、一人ひとりからいろんなアイディアが生まれてくる。僕、彼の仕事だったら何でもやるというぐらい信頼しています。


About シェイクスピア
シェイクスピアは翻訳家に俳優に 美しい日本語に挑戦させる

松岡

原語で読むとシェイクスピアはとても美しい響きを持っています。その翻訳とは、美しい日本語の発掘・発見でもあるんですが、村井さんはどう感じていらっしゃいますか。

村井

僕は最初、ジョンが原語で数行読むのを聞いて、打ちのめされた感じがしたんですよ。一つひとつ、ちゃんと韻を踏んでいるしリズムもある。これを日本語で表現するのはなかなか難しいことだなあと。
だから実は、美しい音楽が流れて、幕がすーっと上がって僕が最初に出てきて言うシーシアスの第一声が、とても怖かった。こういう美しい世界で、こういうことが起こるかもしれないんだよ、という、『夏の夜の夢』全体のイメージをどう伝えられるか。それは決してわかりやすい言葉に置き換えればいいというものじゃない。松岡さんが訳した美しい、けれども今はほとんど使われていない言葉をどう、僕自身がリアリティを持って語れるのか。これはもう、挑戦ですね。しかも、美しい音楽や舞台装置に囲まれているのですから、そのなかでどう存在し融合していくのか。すごいプレッシャーです。もっとも、それができるのが、すごい楽しみなんですが。

松岡

稽古中、村井さんからも、「こういう言葉があるんじゃないか」といった提案をいただきましたが、それが、さらに美しい言葉を生み出すことにつながります。今日本語は、言葉の熱帯雨林に「今風」という名の酸性雨が降り注いで、目の前で美しい言葉の古木がバタバタと倒れているような感じです。

村井

今までも僕はシェイクスピアをやっていますが、そのすべてに「古木」があった。それをどう甦らせるか。美しい日本語を伝えることは、役者としての、一つの仕事だと思っています。


About この舞台の見どころ
夢を語れる演劇の力が劇場を包み 客席も舞台もまるごと妖精の森に誘う

松岡

衣装や舞台装置も圧巻です。とくにロバは、耳は動くし歯は剥き出すし。あれは全部、ボトム役の吉村直さんが動かしていらっしゃるんですよね。

村井

そうです。彼の演技はもう、感動ものですよ。そして、衣装・美術のスー・ブレインがあのロバを持ってきた時の、ジョンの喜びようは大変なものでした。稽古場には、こうした衣装も装置もかなり早くからあってワクワク感に満ちていた。妖精たちの耳は一人ひとり型をとって作られていて、自然にすっと入る。稽古の時から楽しくて、その楽しさが、俳優に閃きをもたらす。僕なんか、サングラスをかけちゃいましたよ。

松岡

あのオーベロンはポップでファニーでした。もう一つ、私が忘れられないのがラストです。イギリスのストラッドフォードで見た時にはない、どんでん返しがありました。

村井

そのパックの台詞に僕、泣けました。演劇というのはこうやって夢を語れて、お客さんも一緒に夢の世界へ行けて、そういう世界なんだけども……これ以上、ここで言ってはいけないですね。

松岡

あれは、ジョンの深い読み込みが生み出したものでしょうね。『夏の夜の夢』というシェイクスピア作品そのものが内包する意味と価値を教えてもらった気がしました。

村井

ジョンは、演劇を信じているんです。演劇を信じて、演劇の喜びを劇場空間にいるすべての人に伝えたいという思いが、彼にはある。だから、この楽しさは客席にも伝染します。富山の皆さん、楽しみにしていてください。劇場で、一緒に妖精の森へ行きましょう。


  『この楽しさはどんどん繋がる』 夏の夜の夢 シーシアス|オーベロン役 村井国夫インタビュー


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